Classici giapponesi con furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Leggi 大岡越前 (おおおかえちぜん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 218.436 caratteri · 437 schermate
そして門までの暗い飛石づたいを、足さぐりに歩いてゆくと、がたっと、袖垣の蔭にあたって、不自然な雨戸の音がし、たしかに人間らしいものが、そこらの庭木をくぐって、塀のミネへ登っていた。
「賊だッ。叔父上っ、叔父上のお部屋へ、何者か、忍びこみましたぞっ」
大きく家の内へ告げておいて、主殿はすぐ往来へ躍り出ていた。
まるで、凩の中の一葉にも似て、賊の影は、もう坂下へ向って、逃げ走っている。――おのれっと目がけて、主殿も飛ぶように追いかけた。またたく間に距離をつめた。
賊は、鼬のように振向いて、これは――と明らかに狼狽を見せ、いよいよ馳けたが、坂下を曲がると、うしろから追ッて来る者の跫音も声も耳にとどいて来た。
「待てッ。盗賊!」
声に射られたように、賊は一瞬、ぎくと足をすくめたようだったが、近づいた主殿の方が、もっと大きな愕きに打たれた。
「あっ、弟っ。――市十郎だろう、貴様はッ」
賊は、よろめきかけながら、うしろを見、手を合せるような恰好をした。――が、主殿の意外さは、一そうな憤怒を加え、足は砂を蹴って、もうわずかで、賊の襟がみへ、その手が、とどきかけた。
しかし、とたんに主殿の体は、烈しい弾みをもって、路傍の木の根へ仆れて行った。