Classici giapponesi con furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Leggi 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.333 caratteri · 385 schermate
「仕合せだ」
僕は思わずこう云って作を驚ろかした。作は突然僕から冷かされたとでも思ったろう。気の毒な事をした。
その夕暮に思いがけない母が出し抜けに鎌倉から帰って来た。僕はその時日の限りかけた二階の縁に籐椅子を持ち出して、作が跣足で庭先へ水を打つ音を聞いていた。下へ降りて玄関へ出た時、僕は母を送って来るべきはずの吾一の代りに、千代子が彼女の後に跟いて沓脱から上ったのを見て非常に驚ろいた。僕は籐椅子の上で千代子の事を全く考えずにいたのである。考えても彼女と高木とを離す事はできなかったのである。そうして二人は当分鎌倉の舞台を動き得ないものと信じていたのである。僕は日に焼けて心持色の黒くなったと思われる母と顔を見合わして挨拶を取り替す前に、まず千代子に向ってどうして来たのだと聞きたかった。実際僕はその通りの言葉を第一に用いたのである。
「叔母さんを送って来たのよ。なぜ。驚ろいて」
「そりゃありがとう」と僕は答えた。僕の千代子に対する感情は鎌倉へ行く前と、行ってからとでだいぶ違っていた。行ってからと帰って来てからとでもまただいぶ違っていた。高木といっしょに束ねられた彼女に対するのと、こう一人に切り離された彼女に対するのとでもまただいぶ違っていた。