Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

Leggi 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.333 caratteri · 385 schermate

Aozora Bunko

八

僕はその時の千代子の言葉や様子から察して、彼女が僕のところへ来たがっていない事だけは、従前通りたしかに認めたが、同時に、もし差し向いで僕の母にしんみり話し込まれでもしたら、ええそういう訳なら御嫁に来て上げましょうと、その場ですぐ承知しないとも限るまいと思って、私かに掛念を抱いたくらいである。彼女はそう云う時に、平気で自分の利害や親の意思を犠牲に供し得る極めて純粋の女だと僕は常から信じていたからである。

八

意地の強い僕は母を嬉しがらせるよりもなるべく自我を傷けないようにと祈った。その結果千代子が僕の知らない間に、母から説き落されてはと掛念して、暗にそれを防ぐ分別をした。母は彼女の生れ落ちた当初すでに僕の嫁ときめただけあって、多くある姪や甥の中で、取り分け千代子を可愛がった。千代子も子供の時分から僕の家を生家のごとく心得て遠慮なく寝泊りに来た。その縁故で、田口と僕の家が昔に比べると比較的疎くなった今日でも、千代子だけは叔母さん叔母さんと云って、生の親にでも逢いに来るような朗らかな顔をして、しげしげ出入をしていた。単純な彼女は、自分の身を的に時々起る縁談をさえ、隠すところなく母に打ち明けた。