Classici giapponesi con furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Leggi 新生 (しんせい) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 334.815 caratteri · 663 schermate
四十一
羅馬文字で岸本の名を記しつけた鞄を見るにつけても、悲しい叔父の決心を思いやるような女らしい表情が彼女の涙ぐんだ眼に読まれた。「叔父さん、お休み」それを言いながら、彼女は激しい啜泣と共に叔父の別離のくちびるを受けた。
四十一
翌日岸本は旅の荷物と一緒に旧の新橋停車場に近いある宿屋に移った。そこで日頃親しい人達を待った。入替り立替り訪ねて来る客が終日絶えなかった。中野の友人も来て、岸本の方から頼んで置いた茶と椿の実を持って来てくれた。岸本はその東洋植物の種子を異郷への土産として旅の鞄に納れて行こうとした。「こいつが生えて、大きくなるまでには容易じゃ有りませんね」と中野の友人が言って持前の高い響けるような声で笑ったが、この人の笑声も復た何時聞けるかと岸本には思われた。その日は彼は皆に酒を出した。
慨然として岸本は旅に上る仕度した。眠りがたい僅かの時間をすこしとろとろしたかと思ううちに、早や東京を出発する日が来ていた。その朝、彼が身につけたものは、旅らしい軽い帽子でも、新調の洋服でも、一つとして彼の胸の底に湛えた悲哀に似合っているものは無かった。曾て彼は身内のものが過って鍛冶橋の未決監に繋がれたことを思い出すことが出来る。