Classici giapponesi con furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Leggi 新生 (しんせい) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 334.815 caratteri · 663 schermate
六十三
旅も容易でなかった。それにも関らず、彼は行けるところまで行こうとした。
六十三
東京高輪の留守宅の方に節子を隠して置て嫂の上京も待たずに旅に上って来た心持から言っても、義雄兄に宛てた一通の手紙を残して置いて香港を離れて来た心持から言っても、岸本は再び兄夫婦を見るつもりで国を出たものではなかった。節子は旅にある叔父に便りすることを忘れないで、彼女が郡部にある片田舎から高輪の方へ戻った時にも精しい手紙を送ってよこしたが、その便りが岸本の手許へ着いた頃は、最早ノエル(降誕祭)の季節の近づく年の暮であった。異郷で初めて逢う正月、羅馬旧教国らしいカアナバルの祭、その肉食の火曜も、ミ・カレエムの日も、彼の旅の心を深くした。彼の下宿には独逸のミュウニッヒの方から来た慶応の留学生を迎えたり、瑞西の方へ行く人を送ったりしたが、それらの人達と連立ってルュキサンブウルの美術館を訪ねた時でも、ガボオの音楽堂に上った時でも、何時でも彼は心の飄泊者としてであった。
「人はいかなる境涯にも慣れるもので、それがまた吾儕に与えられたる自然の恵みである」と言った人もあったとやら。ある人はまた、「慣れるということほど恐ろしいものは無い」