Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Leggi 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 173.309 caratteri · 352 schermate

Aozora Bunko

べんがら炬燵

雪の後

雪の後

北がわの屋根には、まだ雪が残っているのであろう、廂の下から室内は、広いので、灯がほしいほど薄暗いが、南の雀口にわずかばかりつよい陽の光が刎ね返っていた。きのうにつづいて、終日、退屈な音を繰りかえしている雨だれの無聊さをやぶるように、地面へ雪の落ちる音が、時々、ずしんと、十七人の腸にひびいた。

太平記を借りうけて、今朝から手にしはじめた潮田又之丞が、その度に、きまって、書物から眸を離すので、そばに坐している近松勘六が、

「雪じゃよ」

低声でささやいた。

「赤穂も、今年は降ったかな」

富森助右衛門がつぶやくと、

「のう、十郎左」

三、四人おいて坐っていた大石瀬左衛門が、前かがみに、磯貝十郎左衛門の方を見て、

「――雪で思いだしたが、もう十年も前、お国元の馬場で、雪というと、よく暴れたのう」

「うむ」

十郎左は、笑くぼでうなずいた。

「この中でも、いちばん年下じゃが、そのころお小姓組のうちでも、やはり、貴様がいちばん小さかった。そして、泣き虫は十郎左と決まっていたので、貴様の顔ばかり狙って、雪つぶてが飛んで来たものだった」

「泣き虫なら、もっと、涙もろい先輩がおるよ」