Classici giapponesi con furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Leggi 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 173.309 caratteri · 352 schermate
隻眼子
一
「なんだそんな老武者か。はやくして来い。手に余ったら、わしが行ってやる」
隻眼子
一
そこは北向きで、仄暗くてまた、冷たかった。柱なし何間四面という板壁板床である。わずかに武者窓から映す光が、淡い縞目の明りをそこに落している。
「…………」
「…………」
その光り縞のなかに、二つの木剣が、呼吸し合っていた。
又十郎の呼吸が少し昂い。顔は最初の血潮が褪せて、蒼白になっていた。それに反して、綾部大機の練れた体の構えには、まだ何ら不安な兆しがない。
門前では気づかなかったが、ここで見ると大機の横顔には、耳わきから顎にかけて、大傷の痕があった。世の中はまだ殺伐な遺風を多分に湛えている。大坂陣以後、二十年とは経っていない寛永十年なのである。戦場傷なら二百石や三百石ですぐ売れ口はつく傷だ。いやその傷一つでなく、面だましいといい、総じてどこか重厚で、これは明らかに、又十郎宗冬の敵ではない。
「御曹子」
大機は、声をかけた。
「――止めようか」
「なに」
「せっかく、ここに立っては見たが、もうやるまでもない」
「だまれ。どこに勝敗がついた。まだ、まだ」
「ああ。それすら分らない坊ンち。