Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Leggi 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 173.309 caratteri · 352 schermate

Aozora Bunko

江戸の花嫁

一

彦太は、自分の置場をもちあつかって、

「伊能先生の道場へ行かなくっちゃなりませぬで、わしは、一足先に……」と、お村へささやいた。

お村は、帰りそびれて、酌された盃を幾つも前にならべていた。

「じゃ私は、皆さんがおひらきになった後で、殿様へ、あの事をお願いしておくから」

といった。

彦太は、もうどうでもいい気がした。門の外へ出て、芽柳の上の夕星を仰いで、ほっと、生き甦ったような心地だった。すると、樹蔭から、白壁みたいな顔に猥らな笑みをもって、にやにや、近づいてきた女が、

「ちょいと」

彦太の袂を、手に巻きつけた。

彦太は、びっくりして、

「なんだっ」

「ね……いいんでしょう」

「なにが、なにが」

「あそんで……さ」

頑固な彦太の腕が、いきなり、夜鷹の胸をつきとばした。袂が綻びて、ばくばく口をあいているのも知らずに、彼の逃げ飛んでゆく脚は、後も見なかった。

江戸の花嫁

一

雪の江戸が、朝の一瞬によごされて、騒いだ。

「井伊掃部頭が――御大老が、桜田で、水戸の浪人たちに、やられたってえぞっ」

弁当殻を集めてきた店の若い者が、昂奮して、帳場の彦太へも、小僧へも、奥へもどなった。