Classici giapponesi con furigana
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がくせいものがたり
楽聖物語
野村 あらえびす
Leggi 楽聖物語 (がくせいものがたり) di 野村 あらえびす (のむらあらえびす) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 193.667 caratteri · 381 schermate
少年バッハは事情の許す限り、長い退屈な旅をして、この人の演奏を聴きに出かけたのである。一度はこんなこともあった。十五歳になったばかりのバッハが、ラインケンのオルガンを聴きたいばかりに、なんの用意もなくリュウネブルクを飛び出したが、途中まで行った時は、激しい空腹のために、もはや一歩も動くことが出来なくなっていた。ラインケンのオルガンの魅力が、どんなに少年バッハを鼓舞したところで、一文なしでハンブルクへ行くことは、もはや諦めるより他はなかったのである。
バッハは疲労と失望とにさいなまれながら、泣きたいような心持ちである家の壁にもたれていた。どこからともなく肉の焼ける美味しそうな匂いがして来る――フト顔をあげると、それは宿屋の外壁で、窓の中には山のような御馳走と、温かい火と、楽しい歓談とがあった。
なにか窓から投げられたものがあった。バッハの頭をかすめて地上に落ちたのを見ると、うまそうに焼いた一匹の鰯で、その鰯の口には、燦然たる一個の金貨が哺えさせてあった。誰かが少年バッハの失望しぬいた姿をあわれと見て、こんな冗談をしたのであろう。バッハはその金貨でハンブルクへ行って、憧れのラインケンを聴いたことは言うまでもない。