Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate

Aozora Bunko

佃は、そういう多計代の改った応待ぶりを適当に受け切れず、ちぐはぐに、言葉足らず窮屈そうに答えた。

「お父様には大変お世話になりました。……どうぞよろしく」

「まあかけ給え。……いや、草臥れたことでしょう」

佐々は、妻に云いかけた。

「佃君は大分船に弱いそうで、半分以上寝て来られたんだそうだ」

「まあ、それはそれは」

当人から何か言葉を期待するように、多計代は佃の方を見た。佃は、椅子の左右に肘をのせ、その手を胸の前方で組み、多計代を見て頷くようにしながら、

「もう大丈夫でございます」

と云った。

伸子は、父の椅子の背にもたれて立ち、この心理的対面のなりゆきを眺めた。母が佃に対してどう出てよいものか迷っていたのは、入って来た時、彼女が立っていた様子で判っていた。佃を尊敬し、ある間隔を置いてものを云うべきか、または、伸子の配偶として、砕けて楽に取扱ってよい人間か。彼女はそれをこれら二度の短い応待で試みたらしく思われた。彼女は既に、舌で云えば厭な味のように、何かそぐわないものを佃から感じたのではあるまいか。――さもなければ、なぜああ時々、綺麗な白足袋の爪先を、焦立たしそうに動かす必要があろう。