Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
「気の毒です。……君は健康だし」
「どうして」
「こんなだから――私が」
「病気のこと?」
佃は、返事の代り太い吐息をついた。
「――そりゃ誰だって病気より健康の方がいいわ、でもお互になったら仕方がないし、最もよく治すようにするだけよ。そりゃかまわないけれど――何ていうか……」
伸子は、皮肉にならないように云った。
「気の持ち方とでもいうか――なぜこういう病気、他の内臓の病気を扱うように扱わないんでしょう。――危険がない程度なら、却って頭がよくなっていいくらいに、ぐんと思ってしまう方がいいのよ」
「――とにかく、幸福な人間はならない病気だ」
今度は伸子がどんより、恐怖をもっておもむろに彼を見下した。……これは一つの暗い啓示であった。伸子は夫の病気は病気と思っていた。佃は単純にそうは思っていなかった。伸子が生活に落着けないで彼を苦しめるからだ、と云うのだ。――
皿を抱えたまま、伸子はじっと立っていた。彼女は、ここまで来ても遁路のなかったのを知らされたような沈着を心に感じた。病気に、心と心との撃ち合う音のない争いをやめさせる力は、なかった。
夫が今は病気だから、ひとりでにいたわり助けているが、つきつめたところへ行けば矢張り彼を受け入れているのではない。