Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
どうです、私の天眼通は偉いものでしょう」
とある。二人で読み、笑った。素子は三日いて帰京した。
素子が立つ前に横わっていた長椅子がそのまま、羽根蒲団をのせて部屋の隅にある。夜、境の唐紙をあけ放し、机のある方の部屋は明るく次の間は暗い間をぶらぶら行きつ戻りつしながら、伸子はいつの間にか再び自分を貫いて、活溌な生活慾が流れだしているのを感じた。自覚しないうちに全身がその流れに領せられたかのようであった。一週間前、素子が来るという通知を受取った晩自分を眠らせなかった殆ど肉体的な痛みのような悲しさが、却って生活慾の目覚めを知らす前兆であったかの観があった。新しい生活をしたい、違った暮しを見出したい、そう思いつめ求めていたとき、それらのものはどこにあるかさえ知れなかった。知らないうちに、時期が来た。ある朝ふと目を醒し、人が俄にしみじみと天地の春を感じるように、気がついて見まわすと、もういつか自分のまわりを流れているのは過去の潮ではない。――そう云う気持が深く伸子を動かした。
翌日、伸子はしっかりと更に一段覚悟のきまった心持で、佃に手紙を書き出した。情誼ある手紙を書きたいと思うと、和らいだ気分はいつぞやの夜の通り、すらりと溢れ出さず、変に整然とした丁寧な言葉の文ができた。