Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

Leggi 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 150.635 caratteri · 306 schermate

Aozora Bunko

だが、槍を持ったなと思う瞬間、微笑ましい光景などは消し飛んで、兄弟の掛り合う烈しい気声は、朝から続いて惰気満々だった大人どもの試合のどれよりも真剣で凄まじくさえあった。

そのうちに、あッ――と皆が口走った。弟の謙三郎の小さい体が、砂を浴びる山鳥のように、草埃につつまれて、だっと槍もろとも、躍ったと思うと、兄の紀一郎は物すごい勢いで仰向けに突き仆されていたのだった。

「――危ないっ」

「もうよいっ」

判者も思わず叫び、世話人も駈け寄って中を割った程であった。

三

紀一郎は、頬を突かれたのである。それから数日、顔半分が樽のように腫れ上がって、寝床から起つこともできなかった。

「兄さん、痛い。まだ痛い?」

謙三郎は心配そうに、兄の枕元から離れなかった。

そして兄の顔をさし覗いては、

「ごめんね」

と、云った。

「…………」

紀一郎は、眼をふさいだまま、何も云わなかった。余りに何も云ってくれないので、

「怒ってんの?」

謙三郎が云うと、

「……ううん」

首を振って、兄の紀一郎は、たらりと眼じりから涙を垂らした。そして弟の手をにぎり、

「よくやったね、欣しいよ、兄のくせに、わしの勉強が足らなかった。