Classici giapponesi con furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Leggi 大岡越前 (おおおかえちぜん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 218.436 caratteri · 437 schermate
「なにさ。顔いろを変えて」
「なんとなく、気になるので、その辺まで、ちょっと出てみたら、いやもう町はえらい騒ぎなんで」
「なにがさ。よく落ちついて話しておくれな」
「だから……今朝、あっしが、極密に、お袖さんだけにはと、そっと話したじゃありませんか」
と、うしろの戸口をキョトキョト見て――
「お犬小屋の一件さ」
「あ。あのふたりのことかい」
「やったらしいんで。……もう町じゃ、その噂やら落首やらで、あっちでもこっちでも、近頃にない気味のいいことだ、やったのは、町奴か、旗本か。イヤ、ふだん空威張りばかりしている奴らにそんな気のきいたまねができるもんか、これは天狗業だろうなんて、町の衆は溜飲をさげてみんなその話で、持ちッきりに沸いているのさ」
「そうだろうね」と、お袖も、ニコと笑った。
「じゃあ、この春殿中で、浅野様が吉良上野介を刃傷したときのような騒ぎかえ」
「まさか、それほどでもありませんがね。しかし、腹ん中じゃ、あの時よりも、こん夜のほうが、誰でも胸をスウとさせていましょうよ。――だが、戌年の犬公方も、戌年の柳沢吉保も、面当てを喰ったようなもので、どんなに怒ったかもしれますまい。