Classici giapponesi con furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Leggi 大岡越前 (おおおかえちぜん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 218.436 caratteri · 437 schermate
いかに“見る眼、嗅ぐ鼻”と綽名されているかれらにしても、この仮白洲へもうやって来るとは、余りにも早すぎる。何か、意地悪くさえ思われないでもない。
与力、同心たちなどの、奉行所付の人々は、内心、そう思ったにちがいないが、しかし、かれらの傍聴を拒む理由は何もなかった。
「御苦労にぞんずる」
越前守は、二人にそう答えた。そしてこころもち微笑をふくんだ。むしろかれらの公的な傍聴を本懐とするようにである。――そしてやや居住いをあらため、白洲にすえているお袖の影へ眼を向けた。しずかな、穏やかな眼であった。
おそらくはこの一瞬のかれの眼を、満廷の者は、たれもみな多分な不安と危惧をもって、見まもったにちがいない。――ここには姿を見せていない物蔭の鉄淵禅師にしても、
(さて、いざとなったら、どうあろうか)
と、片唾をのんで、越前守がいかにお袖を裁くか――いや彼が彼自身に裁かれるかを――耳澄まして聴いているにちがいない。
石
「お袖というか」
と、越前守は静かに口を切った。そして、
「面を上げよ。お袖とやら、面を上げい」
と、かさねていった。
「…………」
お袖はここへ据えられてからじっと俯向いたきりであった。