Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

Leggi 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.333 caratteri · 385 schermate

Aozora Bunko

「あたし行って上げましょうか」

僕は彼女の眼を深く見た。彼女も僕の顔を見た。けれども両方共そこに意味のある何物をも認めなかった。叔母は千代子の方を振り向きもしなかった。そうして、「御前のようなむきだしのがらがらした者が、何で市さんの気に入るものかね」と云った。僕は低い叔母の声のうちに、窘なめるようなまた怖れるような一種の響を聞いた。千代子はただからからと面白そうに笑っただけであった。その時百代子も傍にいた。これは姉の言葉を聞いて微笑しながら席を立った。形式を具えない断りを云われたと解釈した僕はしばらくしてまた席を立った。

この事件後僕は同じ問題に関して母の満足を買うための努力をますます屑よしとしなくなった。自尊心の強い父の子として、僕の神経はこういう点において自分でも驚ろくくらい過敏なのである。もちろん僕はその折の叔母に対してけっして感情を害しはしなかった。こっちからまだ正式の申し込みを受けていない叔母としては、ああよりほかに意向の洩らし方も無かったのだろうと思う。千代子に至っては何を云おうが笑おうが、いつでも蟠まりのない彼女の胸の中を、そのまま外に表わしたに過ぎないと考えていた。