Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

Leggi 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.333 caratteri · 385 schermate

Aozora Bunko

「だって御母さんは元の通りの御母さんなんだよ。おれだって今までのおれだよ。誰も御前に対して変るものはありゃしないんだよ。神経を起しちゃいけない」

「神経は起さなくっても淋しいんだから仕方がありません。僕はこれから宅へ帰って母の顔を見るときっと泣くにきまっています。今からその時の涙を予想しても淋しくってたまりません」

「御母さんには黙っている方がよかろう」

「無論話しゃしません。話したら母がどんな苦しい顔をするか分りません」

二人は黙然として相対した。僕は手持無沙汰に煙草盆の灰吹を叩いた。市蔵はうつむいて袴の膝を見つめていた。やがて彼は淋しい顔を上げた。

「もう一つ伺っておきたい事がありますが、聞いて下さいますか」

「おれの知っている事なら何でも話して上げる」

「僕を生んだ母は今どこにいるんです」

彼の実の母は、彼を生むと間もなく死んでしまったのである。それは産後の肥立が悪かったせいだとも云い、または別の病だとも聞いているが、これも詳しい話をしてやるほどの材料に欠乏した僕の記憶では、とうてい餓えた彼の眼を静めるに足りなかった。彼の生母の最後の運命に関する僕の話は、わずか二三分で尽きてしまった。