Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

Leggi 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.333 caratteri · 385 schermate

Aozora Bunko

或る晩もその用で内幸町まで行って留守を食ったのでやむを得ずまた電車で引き返すと、偶然向う側に黄八丈の袢天で赤ん坊を負った婦人が乗り合せているのに気がついた。その女は眉毛の細くて濃い、首筋の美くしくできた、どっちかと云えば粋な部類に属する型だったが、どうしても袢天負をするという柄ではなかった。と云って、背中の子はたしかに自分の子に違ないと敬太郎は考えた。なおよく見ると前垂の下から格子縞か何かの御召が出ているので、敬太郎はますます変に思った。外面は雨なので、五六人の乗客は皆傘をつぼめて杖にしていた。女のは黒蛇目であったが、冷たいものを手に持つのが厭だと見えて、彼女はそれを自分の側に立て掛けておいた。その畳んだ蛇の目の先に赤い漆で加留多と書いてあるのが敬太郎の眼に留った。

この黒人だか素人だか分らない女と、私生児だか普通の子だか怪しい赤ん坊と、濃い眉を心持八の字に寄せて俯目勝な白い顔と、御召の着物と、黒蛇の目に鮮かな加留多という文字とが互違に敬太郎の神経を刺戟した時、彼はふと森本といっしょになって子まで生んだという女の事を思い出した。森本自身の口から出た、「こういうと未練があるようでおかしいが、顔質は悪い方じゃありませんでした。