Classici giapponesi con furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Leggi 新生 (しんせい) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 334.815 caratteri · 663 schermate
五十四
五十四
新しい言葉を学ぶことによって、岸本は心の悲哀を忘れようと志した。同宿の留学生が天文台の近くに住む語学の教師を彼に紹介した。その人は巴里に集る外国人を相手に仏蘭西語を教えて、それを糊口としているような年とった婦人であったが、英語で講釈をしてくれるので岸本には好都合であった。取りあえず、彼は語学の教師の許に通うことを日課の一つとした。
こうして故国の消息を待つうちに、西伯利亜経由とした義雄兄からの返事が届いた。思わず岸本の胸は震えた。兄は東京の留守宅の方から書いてよこした。お前が香港から出した手紙を読んで茫然自失するの他はなかったと書いてよこした。十日あまりも考え苦しんだ末、適当な処置をするために名古屋から一寸上京したと書いてよこした。お前に言って置くが、出来たことは仕方がない、お前はもうこの事を忘れてしまえと書いてよこした。
兄はまた、これは誰にも言うべき事でないから、母上はもとより自分の妻にすらも話すまいと決心したと書いてよこした。嘉代(嫂)には、吉田某というものがあったことにして置くと書いてよこした。その某は例の人を捨てて行方不明であるということにして置くと書いてよこした。