Classici giapponesi con furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Leggi 新生 (しんせい) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 334.815 caratteri · 663 schermate
二十九
節子が沈んでしまわねば成らないほど希望を失うようなことは、彼女の前途には見当らなかった。
そこで彼は一つの言葉を思いついた。どうしても原因の分らない彼女の濃い憂鬱を「節ちゃんの低気圧」という風に言って見た。その日まで彼はなるべく彼女を避けるようにし、直接に言葉を掛けることをすら謹み、唯遠くから彼女を眺めて来た。言葉を替えて言えば、彼はまだ真面に節子を見得なかった。不思議な低気圧が来て見ると、彼は否でも応でもこの黙し勝ちな不幸な人の容子を注意して見ない訳にいかなかった。
二十九
毎日のように岸本は訪問のために出歩いた。旧知なつかしい心から彼は訪ねられるだけ親戚や知人を訪ねたいと思った。芝に。京橋に。日本橋に。牛込に。本郷に。小石川に。あだかも家々の戸を叩いて歩く巡礼のように。そして高輪を指して帰って来て見る度に、相変らず節子は鬱ぎ込んでいた。
旅から岸本が心配しながら帰って来た時、彼の想像する姪は姿からしてひどく変り果てた人であった。あの巴里の下宿の方で取出すのも恐ろしいほどに思った節子の写真に撮れた姿――彼女自身の言葉を借りて言えば、まるで幽霊のように撮れたという産後の衰えた姿――それがまだ彼の眼にあった。