Classici giapponesi con furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Leggi 新生 (しんせい) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 334.815 caratteri · 663 schermate
八十七
そう云うものを持つことの出来る方を御羨ましくも思います……」
節子はこういう手紙を愛宕下の宿宛に送ってよこした。彼女は自己の失敗を語ることによって、男の手一つに子供を育てて行こうとする岸本を慰めてよこした。
岸本がこの手紙を受取ったのはもう大分下宿に沈着いた頃であった。何故彼が好んでこんな生活を始めたか、その深い事情は節子一人より他に知るものが無かった。幾度となく彼は義雄兄の前に、この下宿まで辿り着いた自分の道筋を――節子と自分との一切の関係を打明けようと思い立たないでは無かった。
「お前達は叔父と姪ではないか。お前達の為ることは結局不徳の継続ではないか」
兄の答えを想像するとこの言葉に尽きていた。そう思う度に岸本は嘆息して、持前の沈黙に帰って行った。
八十七
愛宕下の下宿には何一つ岸本が巴里の下宿生活を偲ばせるような似よりのものは無かった。プラタアヌの並木の映る窓のかわりに、ここには庭の青い松葉なぞの見える障子がある。モン・パルナッス通いの電車の音や大きな荷馬車の音やその他石造の街路から窓の硝子に伝わって来る恐ろしい町の響のかわりに、ここには町中と言っても静かな母屋の二階と階下とから庭をへだてて聞える客の話声や煙草盆の音がある。