Classici giapponesi con furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Leggi 新生 (しんせい) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 334.815 caratteri · 663 schermate
その辺は岸本に取って少年時代からの記憶のあるところであった。
元園町の友人は古い江戸風の残った気持よく清潔な二階座敷で岸本を待受けていた。この友人が多忙しい身に僅の閑を見つけて隅田川の近くへ休みに来る時には、よく岸本のところへ使を寄した。
「御無沙汰しました」
と言って坐り直す元園町をも、岸本をも、「先生、先生」と呼ぶほど、その家には客扱いに慣れた女達が揃っていた。
「元園町の先生は先刻から御待兼でございます」
と髪の薄い女中が言うと、年嵩な方の女中がそれを引取って、至極慇懃な調子で、
「岸本先生もしばらく御見えに成りませんから、どうなすったろうッて皆で御噂を申しておりましたよ。御宅でも皆さん御変りもございませんか。坊ちゃん方も御丈夫で」
岸本が古い小曲の一ふしも聞いて見るために友人と集ったり、折々は独りでもやって来て心を慰めようとしたのは、その二階座敷であった。年と共に募る憂鬱な彼の心は何等かの形で音楽を求めずにいられなかった。曾て彼が一度、旧友の足立をその二階に案内した時、「岸本君がこういうところへ来るように成ったかと思うと面白いよ」と言って足立は笑ったこともあった。