Classici giapponesi con furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Leggi 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 173.309 caratteri · 352 schermate
妖鬼燈
一
ぼんやりが幸福なのだ。鈍中の鈍となって、ちくりとでも、真実に眼が醒めないことを祈っているのだ。巡査は将に、彼のためにあってくれるような職務でもあった。
午後六時。
規定どおりに、彼は山手屯所の出張室へ帰って来た。
そして、何気なく、自分の机の抽斗を開けると、罫紙に走り書で、
居留地十四番館
赤い異人屋敷
コック部屋の裏門
深更まで至急監視の事
聯絡、後よりとる。(田)
田辺の命令が眼を刺した。
妖鬼燈
一
海岸から一側裏の通りだったその青い街燈は、よく見ると、波の音に時折身震いをしていた。
示令をうけた異人館は、四つ角だった。コック部屋と思える燈火の映っている裏門から、約二十間ほど離れて、旗岡巡査は立っていた。
港の船から、一時間おきに、鐘が聞えてくる。
「もう十一時だ」
と、思う。
約五時間の間、旗岡巡査は、見張っている門から何者の出這入りも見なかった。しかし、何らの惑いも落胆も抱かなかった。期待を持たない対象には惑いの生じようも落胆のしようもないのである。
「今に、田辺刑事から、何とか聯絡してくるだろう」
それだけを待っていた。
ただ、足は棒と違う。
さすがの旗岡巡査も、そこらの短い距離の間を、所在なげに散歩し出す時は足の痺れを思い出した時であろう。