Classici giapponesi con furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Leggi 次郎物語 (じろうものがたり) di 下村 湖人 (しもむらこじん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 159.223 caratteri · 320 schermate
お浜の声である。
「やっぱり帰ろうとは言わないのかい。」
「ええ、ちょいと門を出るのでさえ、このごろでは、おずおずしていらっしゃるようで、そりゃおかわいそうなんですの。」
「でも、私から、じかに言って聞かしたら、納得しないわけはないと思うのだがね。」
「そうだと結構でございますが……」
「親身の親が言ってきかしても、駄目だとお言いなのかい。」
と、少しとげのあるものの言いかたである。それが次郎にもよくわかる。
「そりゃ、仕方がございませんわ。」
お浜の突っ張る声。次郎はそれでいくらか気が強くなる。
「困った子になってしまったわ。」
次郎は、胸のしんに異様な圧迫を感じた。お浜は返事をしない。しばらくは、団扇の音だけが、ばたばたと聞える。
「とにかく、今夜はどんなことがあっても、つれて帰るつもりでやって来たんだからね。……まだ寝ついてはいないんだろう。」
急に団扇の音がやんで、誰かが立ち上るような気配がした。
次郎は唾をこくりとのんで、爺さんの方に寝がえりを打った。そして鼾をかくまねをした。しかし、彼の瞼はぶるぶるとふるえて、心臓の鼓動が乱調子なのを物語っている。