Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九)不死の霊薬

野村 胡堂

Leggi 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 144.106 caratteri · 292 schermate

Aozora Bunko

開いてみると、

――お願いだから逃げて下さい――

とたったこれだけ、顔をあげると、お蔦の美しい眼が、どこかで訴えているのを、ガラッ八は意識しました。

が、あの池と船と、美女と、酒宴の誘惑は、ガラッ八を押し倒してしまったのでしょう。紙片を小さく丸めて、ポンと口の中へ抛り込むと、何事もなかったように、不死の霊酒の筵に坐ります。

先達夫婦や少女達がいろいろの儀式を済ませると、黄金の杯が出ました。不死の霊酒を一杯ずつ、なみなみと注いでくれます。

「おや?」

庭のあたりで、何やら大きな物音がしました。誰か往来から、石でも抛ったのでしょう。が、それもほんの一度だけで、夜は水のごとく静まり返ると、ガラッ八はコクリコクリと居睡りを始めました。

やがて、死んだ魚のようにガラッ八は、畳の上に眠りこけてしまったのです。

「もういいよ」

「よし来た」

二人の男が、ガラッ八を担ぎあげました。

「こいつは岡っ引だそうじゃないか」

「シッ」

「どうせ聞える気遣いはないよ、腐った鮪のようなものだ」

そんな事を言いながら、土間伝いに次の家へ、長屋のお勝手から次の家へ、またその次の家へ、――五六軒の家を黙って抜けると、祈祷所の反対側に門戸を張っている、医者の玄道の家になるのでした。