Classici giapponesi con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Leggi 伸子 (のぶこ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.543 caratteri · 466 schermate
伸子は、さすがに母も、いきなりは云い出せずにいるのに、好意を感じた。彼女は、
「だから、もういいことよ」
と云った。
「いいですみますか」
庭を月が照していた。八つ手や梧桐の広い葉の面が、濡れたように光った。反対の側の樹陰、枝の奥は異様に暗く、庭がいつになく迫る力を持って見えた。膝を抱えてそれを眺めながら、伸子は母と佃との問答を、熱心に聴いた。佃は勿論断るに定っている。断るに定っている――
「そういうのが、私どもの考えなんですがね――」
やがて多計代が一段落で、佃の返答を求めた。
「尤も、伸子はあなたも御存じの通りの性質だから、まるで恥辱でも受けるようにお腹立ちですがね」
伸子は、耳を裏向けにするような集注で、佃の言葉を期待した。
「――……」
「どうです、私どもはあなたのためにだって、決して悪いとは思いません」
「――考えて見ていずれ御返事いたします」
伸子は、くるりと後を向き、
「そんなこと――考えないだってもうわかっていてよ」
と、叫ぶように云った。
「あなた、そんな積りおありになりゃしないんじゃないの」
黙っている佃を見つつ、多計代が云った。
「お前は引っこんでおいで――佃さんは佃さんの意見がおありだろう」