Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

Leggi 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 150.635 caratteri · 306 schermate

Aozora Bunko

「取払えっ。すぐに! 目障りだ」

と、今日のような、戦場声が、殿中を揺すり出すのだった。

八

――が、迦羅奢夫人が、もっと困じ果てていることは、忠興の余りに度の過ぎた強い愛情のあふれであった。

それも、戦場にあって、留守勝ちとなるせいと、ひとつには、彼女の美貌の聞えがあまりに、諸大名の簾中でも稀なものと称われすぎているせいでもあろうが、

「留守のうちは、他行はさすな」

と目付のような武士をさえつけて、日常のことまで、帰ると報告を聞くといったふうであった。

「夫人のことは、噂もならぬぞ」

と、家中へ口止めしたりした。

何で良人が、そのように自分を監視するかと、浅ましくさえ思われたが、よくよく自分を繞る世間を見まわして見ると、額に長い皺の幾筋もある太閤殿下の赤ら顔が、胸にうかんだ。

秀吉が、何かの折、忠興と自分のいるところで、戯れに云ったことがある――

「よその垣であろうが踏みこえて、つい手折りとうなるほどな花を、忠興は家内にお持ちじゃな。……麗しい! 淀よりは美しい」

あの君は、何でもずばずばいう御方と知ってはいても、迦羅奢は、顔を紅らめた。良人は不愉快な顔をして、聞えない顔していた。