Classici giapponesi con furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Leggi 大岡越前 (おおおかえちぜん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 218.436 caratteri · 437 schermate
男は、五十がらみ。おそらくこの荒れ屋敷の主人だろう。場中の者が、その者を呼ぶには特に「番町様」といったり「刑部様」と敬称したりしている。
刑部様は、稀代な醜男だが、屈むにも骨が折れそうな、隆々たる筋肉をそなえ、ごろ武家、ぐれ旗本をも、よく威伏せしめる金力と腕力の保有を、その風貌は実証して余りがある。そしてまた、太い猪首をうごかし、脂ぎった赤ら顔から、眼をうごかすとき、火傷かほうその痕か、片方の瞼の肉がひッ吊れて、眉が半分欠けているのが、ひどく人に獰猛な圧迫感を与えるのでもあった。
そのうちに、阿能が、
「刑部様。……ちょっと、お手のあいたところで」
と、耳打ちして、彼と共に、市十郎が覗き見している杉戸の方へ、連れ立って来た。
市十郎は、戸惑った。あわてた。
だが、出て来た二人は、すぐ暗い中で、立ち話をしはじめた。
「……どうです。こいつあ」
「お。二の丸の金蔵図面か。よく手に入ったなあ、阿能」
「その代り大骨折りでさ。褒美は、うんと貰わなくッちゃ埋まりませんぜ」
「ケチな欲はかくな。仕事はこれからだわ。……だが、これを持ち出す手先に使った、市十郎とかは、どうしたい?」