Classici giapponesi con furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Leggi 大岡越前 (おおおかえちぜん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 218.436 caratteri · 437 schermate
「夏が近いの」
越前守は、書類につかれた眼を、ふとあげて、
「勘蔵。うしろの障子をすこし開けんか」
と、いった。獄舎、白洲のあるこの役邸にも、中庭があり、ぬれ縁の外には、若楓のみずみずしい梢に、夏近い新鮮な木もれ陽がそよいでいた。
石の井筒井から、掛け樋が小流れへ落ちている。その小さい飛沫のさきに、小鳥が降りて、戯れていた。
「静かだのう。義平太も、一ぷくせぬか。唐詩選であったか、たれやらの詩に――林泉市ニ近ウシテ幽ハ更ニ幽ナリ――という句があった」
「お奉行。どういう意味ですか」
「幽。……つまりほんとのしずけさというものは、人もない山野の中のそれよりは、かえって、騒然たる市中のふとしたうちに、真の寂があると申すらしい」
「ははあ。詩人の逆説ですか」
「逆説といってはあたるまい。理念ではないのだから。――だから理くつでは逆になるが、ようく考えてみると、理くつ以上の真実にちがいない」
「では物事も、理づめでは、絶対な真実には、達しませぬな」
「そうもいえようか」
「御法令は、理でございましょう」
「理のたたぬ法律はない。しかし、理が法令という考え方はどうかの。非理をもって正理をたばかる市井の智者がたくさんおる」