Classici giapponesi con furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Leggi 大岡越前 (おおおかえちぜん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 218.436 caratteri · 437 schermate
「いかにも、おれが不伝だが。――それがどうした」
「すると、その女は?」
「なんだ、貴様は。それからいえ」
「わしは、こういう者だが」
と、名刺を示し、すぐ次に、輪王寺の執事から取って来た、不伝への追放状を見せた。
「あっ、こ、これは……」
「不伝っ。まっ直ぐに申さぬと縛り上げるぞ」
「いけねえ」
と、いうやいな、不伝は、駈け出して、ばっと、往来へ逃げ出した。
藪八はすぐ往来へ向いた縁の障子を開け、そこから弁天堂の方へ呶鳴った。
「おーいっ、蔭の者、その男を、ひッ捕えろ」
蔭の者とは誰なのか。供の者という意味だろうか。だが藪八に供が従いていた例がない。
けれど事実は、かれの行くところ、必ず、見えない供の者が、従いて歩いた。江戸城の隠し目付藪田助八に、手となり足となる助力者が附随していないわけもない。
果たして、不伝が駈け出した先に、二人の武士が、横から躍り出していた。大手をひろげて、難なく捕まえ、藪八の次の命令を、耳澄まして待っていると、
「いや、よせよせ。どうせ其奴は寛永寺の追放者。捕えたところで、足手まといだ。押ッ放してしまえ」
そう聞えて来たので、二人の蔭の者は、不伝の背中を突き飛ばして、苦笑しながらその影を見送った。