Classici giapponesi con furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Leggi 大岡越前 (おおおかえちぜん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 218.436 caratteri · 437 schermate
「お袖。いるかい?」
「たれだい」
――案外、返辞は男の声。
「おや、味噌久じゃねえか」
「オオ、大亀か」
「どうしたい。子どもを背負って、台所なんぞしやがって、不景気な」
「だって、この子を、干乾しにするわけにもゆくまい」
久助は、背なかで泣きぬくお燕をあやしながら、箸や茶碗を洗っていた。
「ところで、お袖は……?」
「あの晩きりさ。……行方知れずだ」
「え。あの晩きりだって」
「どうしても、市の字に会わせろというので、大岡家へ連れて行ったさきおとといの晩からさ。……ここへも、どこへも、帰って来ねえ」
「はてな。……まさか、身投げをしたわけでも、あるめえが」
「それとも、屋敷の奴らにでも殺されたかと、心配で堪らねえから、実あ、きのう思いきッて、大岡家の仲間にきいてみたのよ。そしたら、何でもあの晩、召使たちが三、四人でお袖を駕籠に押しこんで担ぎ出し、番町辺の濠際へ、その駕籠ぐるみ、抛り捨てて帰ったなんていやがるんだ。――その番町も、さんざん歩き廻ってみたが、かいもく何も分らない」
「梅賀も、留守かい」
「これも四、五日前に出たきりだ」
「久助、とにかく、朝飯をくれよ。飯を食っての、思案としよう」