Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

Leggi 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.333 caratteri · 385 schermate

Aozora Bunko

が、もしその僕が彼女の意に背く事が多かったら、これほどの不幸はまた彼女に取ってけっしてない訳になる。それを思うと僕は非常に心苦しい事がある。

思い出したからここでちょっと云うが、僕は生れてからの一人息子ではない。子供の時分に妙ちゃんという妹と毎日遊んだ事を覚えている。その妹は大きな模様のある被布を平生着て、人形のように髪を切り下げていた。そうして僕の事を常に市蔵ちゃん市蔵ちゃんと云って、兄さんとはけっして呼ばなかった。この妹は父の亡くなる何年前かに実扶的里亜で死んでしまった。その頃は血清注射がまだ発明されない時分だったので、治療も大変に困難だったのだろう。僕は固より実扶的里亜と云う名前さえ知らなかった。宅へ見舞に来た松本に、御前も実扶的里亜かと調戯われて、うんそうじゃないよ僕軍人だよと答えたのを今だに忘れずにいる。妹が死んでから当分はむずかしい父の顔がだいぶ優しく見えた。母に向って、まことに御前には気の毒な事をしたといった顔がことに穏かだったので、小供ながら、ついその時の言葉まで小さい胸に刻みつけておいた。しかし母がそれに対してどう答えたかは全く知らない。