Classici giapponesi con furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Leggi 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 195.333 caratteri · 385 schermate
「森本さん、森本さん」と二三度呼んで見たが、なかなか動きそうにないので、さすがの敬太郎もむっとして、いきなり室に這入り込むや否や、森本の首筋を攫んで強く揺振った。森本は不意に蜂にでも螫されたように、あっと云って半ば跳ね起きた。けれども振り返って敬太郎の顔を見ると同時に、またすぐ夢現のたるい眼つきに戻って、
「やああなたですか。あんまりちょうだいしたせいか、少し気分が変になったもんだから、ここへ来てちょっと休んだらつい眠くなって」と弁解する様子に、これといって他を愚弄する体もないので、敬太郎もつい怒れなくなった。しかし彼の待ち設けた冒険談はこれで一頓挫を来したも同然なので、一人自分の室に引取ろうとすると、森本は「どうもすみません、御苦労様でした」と云いながら、また後から敬太郎について来た。そうして先刻まで自分の坐っていた座蒲団の上に、きちんと膝を折って、
「じゃいよいよ世界に類のない呑気生活の御話でも始めますかな」と云った。
森本の呑気生活というのは、今から十五六年前彼が技手に雇われて、北海道の内地を測量して歩いた時の話であった。固より人間のいない所に天幕を張って寝起をして、用が片づきしだい、また天幕を担いで、先へ進むのだから、当人の断った通り、とうてい女っ気のありようはずはなかった。