Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

Leggi 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) di 柳田 国男 (やなぎたくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 257.350 caratteri · 507 schermate

Aozora Bunko

その血筋は私たち兄弟の他にたった一人だけ従妹があって、それも最近に世を去った。

祖父は壮年のころは相応にやかましい人だったらしいが、私の覚えたころにはもう老耄していた。北条から二里に近い辻川への路を、おみやげの八橋の煎餅を懐に十枚ばかり紙に包んで入れて、その一枚をしゃぶりながら孫にあいに来る。いつでも九枚半だなどと笑ったことがあるから、もう歯がなかったのだろう。或時はクニヲがおらんなどといって、涙声で門のあたりをうろついておられたこともある。あのきついおじいさまがこうまでなりはったかと、母が歎いていたことを今でも思い出す。

母の同胞は男女各二人、長男の徳太郎は働き者で、飾磨の港に出て商いに携わっていたが、悪質の花柳病にかかって、そのまま四国巡礼に出てしまい、永久に還ってこなかった。これは世間の思わくを気にする家々の、あのころ普通の処理法だったらしい。或時母が夢にこの兄を見て、悲しみの余りについ私だけに話をしたが、本当は隠しとおすつもりだったらしい。その次の兄の俊次郎とかいったのは好青年であったらしく、家に留まって親によく仕えていたが、やはり永くは生きておれなかった。