Classici giapponesi con furigana
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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
Leggi 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) di 柳田 国男 (やなぎたくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 257.350 caratteri · 507 schermate
南望篇
南望篇
二十八歳から後家暮しを通した祖母の松岡小鶴は、医術も世渡りも相当に拙かったらしく、その方面にはおかしい逸話もいろいろと残っているが、手習いの子供らに少しずつ漢籍を教えたために、私の成長する時分まで、村には珍しい何人かの才女が残っていた。
後になって心づいて、ちょっと驚いたのは、家には『唐詩選』の七言絶句を上下半分ずつに書きわけた、手製の詩がるたが十数枚、手箱の隅にあって、正月にはあれで遊んだものであったと教えてくれるおばさんも何人かあった。私の母が、子供たちにどんな印象を与えるかを見るために、試みにその一部を保存していたとしか思われない。
祖母には二十編足らずの漢文集があって『南望篇』と題して父が清書したものが家に伝わっていた。たしか五十年の年忌に、私が浪人をして旅行ばかりしていたころで、他の兄弟が集まって来て、二百部ばかり活版にして人に分けたものが、私の書棚にも一冊だけある。ちっとは父が手を入れたとも思うが、ともかくも『南望』は、一人子が遊学している間、村のはずれに出て遠く思いを寄せたという、中国の故事によった書名で、現にその過半は一人子に贈った書信であった。