Classici giapponesi con furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Leggi 新生 (しんせい) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 334.815 caratteri · 663 schermate
自分の罪過そのものが何処から出すともなく出してよこす暗い手だ。
岸本はもう一度その手を出し直して見た。誰にも知れないように自己の罪迹を葬ろうとしているような人間のはかなさをよく知るものでなければ、どうしてそんな手のあることを感じ得られよう。それは押頂いても足りないほど感謝すべき手だ。しかし掛引の強い手だ。自分の弱点を握っているような手だ。岸本はつくづく自分の手を眺めて、非常に暗い気持がした。
「姉さん、私も帰って来たものですし、今日からこの家は私にやらせて下さい」
と岸本は嫂の居る部屋の方へ行ってそれを言った。まだ旅行免状なぞのそっくり入れてある紙入から当座の小遣を出して嫂の手に渡した。
同じ船で帰国した牧野から手紙で約束のあった日に、岸本は横浜の税関まで残りの荷物を受取りに行って来た。神戸から横浜の方に廻った馴染の船はまだそこに碇泊中で、埠頭に横たわる汽船の側面や黒い大きな煙筒は一航海の間の種々様々な出来事を語っていた。岸本はその税関の横手からもう一度青い海をも近く望んで来た。
遠く国を目ざして帰って来た岸本の心――その心は彼に取って失うことの出来ない大切なものであった。