Classici giapponesi con furigana
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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Leggi 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) di 橘 外男 (たちばなそとお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 198.400 caratteri · 387 schermate
しかもそれがあながち私ばかりの眼にそう見えたわけではなく、親父や阿母や番頭どもにまでやはりそういうふうに映っていたとみえまして、時々土蔵の中で用を足して出てくる出逢い頭なぞに番頭がヒイ! と品物を取り落として、
「若! 脅かさないで下さいよう! ああ吃驚した!」
と真っ蒼な顔をしていることもございました。なにもこちらではちっとも脅かす気はないのですが、家の中全体がこう何か眼に見えない墓場のような物怪に包まれているものですから、すること為すことが、ただもう陰気なじめじめとしたものに見えて仕方がなかったのでございます。
そしてちょうどその頃にあの不思議なことが起ったのでございました。親父はその二、三日ばかり前から、大胡の方へ出掛けて留守でございましたが、その日も朝から篠突くような烈しい雨で、小歇みもなく降り続いているなんとなく薄ら暗い胴震いのしそうなほど寒い日だったと覚えております。夕方頃からはもう往来の人もなく、ただ滝のような雨が川をなして道を流れておりました。親父も留守ですし、どうせこんな晩にはお客なんぞの来っこもないだろうから、大戸を降ろして久しぶりに骨休めでもしようと、割合に早くみんな寝んでしまったのでございます。