Classici giapponesi con furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Leggi 次郎物語 (じろうものがたり) di 下村 湖人 (しもむらこじん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 159.223 caratteri · 320 schermate
彼らはただ小さな竹筒に手製の火薬をつめ、それをいくつも竿に結びつけて水際に立て、下から順々に火を点じてさえいけば、それで満足したのである。もし、一筋の糸が張ってあり、それを伝って一つの花火が突進し、それを導火にして、一番下の竹筒が火を吹きはじめ、あとは次第に上に燃え移るように口火がつながっており、それに最上端の花火が廻転する仕掛にでもなっていれば、それは彼らの工夫としては、最上のものであった。中には、火薬の中に鉄粉をまぜて、青い花火を出して見せようと試みる者もあったが、それに成功するものは極めてまれであった。
「次郎ちゃん、買って来たよ。」
ある日、次郎が例のとおり病室の次の間で、憂欝な顔をして机の前に坐っていると、誠吉が縁側から這いあがって来て、こっそり耳うちした。それは春子が東京に去ってから数日後のことであった。
彼は相変らず、「いじらしい子」ではありたかった。しかし、春子が去ったあと、彼が心にもない善行をつづけていくには、彼の心はあまりにも淋しかった。それでなくてさえ、花火の誘惑は、このごろ日ごとに彼の心を刺戟して、もうじっとしては居れなくなっていた。