Classici giapponesi con furigana
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しぶえちゅうさい
渋江抽斎
Leggi 渋江抽斎 (しぶえちゅうさい) di Mori Ōgai (森 鴎外) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 166.525 caratteri · 334 schermate
さて新年に入って見ると、五百の健康状態は好くなった。保は二月九日の夜母が天麩羅蕎麦を食べて炬燵に当り、史を談じて更の闌なるに至ったことを記憶している。また翌十日にも午食に蕎麦を食べたことを記憶している。午後三時頃五百は煙草を買いに出た。二、三年前からは子らの諌を納れて、単身戸外に出ぬことにしていたが、当時の家から煙草店へ往く道は、烏森神社の境内であって車も通らぬゆえ、煙草を買いにだけは単身で往った。保は自分の部屋で書を読んで、これを知らずにいた。暫くして五百は烟草を買って帰って、保の背後に立って話をし出した。保はかつ読みかつ答えた。初てドイツ語を学ぶ頃で、読んでいる書はシェッフェルの文典であった。保は母の気息の促迫しているのに気が附いて、「おっ母様、大そうせかせかしますね」といった。
「ああ年のせいだろう、少し歩くと息が切れるのだよ。」五百はこういったが、やはり話を罷めずにいた。
少し立って五百は突然黙った。
「おっ母様、どうかなすったのですか。」保はこういって背後を顧みた。
五百は火鉢の前に坐って、やや首を傾けていたが、保はその姿勢の常に異なるのに気が附いて、急に起って傍に往き顔を覗いた。