Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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すさのおのみこと

素戔嗚尊

芥川 竜之介

Leggi 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 42.917 caratteri · 86 schermate

Aozora Bunko

彼が高天原の国をめぐる山々の峰を越えたのは、ちょうどその後二日経った、空模様の怪しい午後であった。彼は山の頂きへ来た時、嶮しい岩むらの上へ登って、住み慣れた部落の横わっている、盆地の方を眺めて見た。が、彼の眼の下には、ただうす白い霧の海が、それらしい平地をぼんやりと、透かして見せるばかりであった。彼はしかし岩の上に、朝焼の空を負いながら、長い間じっと坐っていた。すると谷間から吹き上げる風が、昔の通り彼の耳へ、聞き慣れた囁きを送って来た。「素戔嗚よ。お前は何をさがしているのだ。おれと一しょに来い。おれと一しょに来い。素戔嗚よ。……」

彼はようやく立ち上った。そうしてまだ知らない国の方へ、おもむろに山を下り出した。

その内に朝焼の火照りが消えると、ぽつぽつ雨が落ちはじめた。彼は一枚の衣のほかに、何もまとってはいなかった。頸珠や剣は云うまでもなく、生捉りになった時に奪われていた。雨はこの追放人の上に、おいおい烈しくなり始めた。風も横なぐりに落して来ては、時々ずぶ濡れになった衣の裾を裸の脚へたたきつけた。彼は歯を食いしばりながら、足もとばかり見つめて歩いた。