Classici giapponesi con furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Leggi 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 183.656 caratteri · 363 schermate
庭の広いのと空地の多いのとを利用して、わたしも近所の人真似に花壇や畑を作った。花壇には和洋の草花の種をめちゃくちゃにまいた。畑には唐蜀黍や夏大根の種をまき、茄子や瓜の苗を植えた。ゆうがおの種も播き、へちまの棚も作った。不精者のわたしに取っては、それらの世話がなかなかの面倒であったが、いやしくも郊外に住む以上、それが当然の仕事のようにも思われて、わたしは朝晩の泥いじりを厭わなかった。六月の梅雨のころになると、花壇や畑には茎や蔓がのび、葉や枝がひろがって、庭一面に濡れていた。
夏になって、わたしを少しく失望させたのは、蛙の一向に鳴かないことであった。筋向うの家の土手下の溝で、二、三度その鳴き声を聴いたことがあったが、そのほかにはほとんど聞えなかった。麹町辺でも震災前には随分その声を聴いたものであるが、郊外のここらでどうして鳴かないのかと、わたしは案外に思った。蛍も飛ばなかった。よそから貰った蛍を庭に放したが、そのひかりはひと晩ぎりで皆どこへか消え失せてしまった。さみだれの夜に、しずかに蛙を聴き、ほたるを眺めようとしていた私の期待は裏切られた。その代りに犬は多い。