Classici giapponesi con furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Leggi 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 183.656 caratteri · 363 schermate
殊に尾花がようやく開いて、朝風の前になびき、夕月の下にみだれている姿は、あらゆる草花のうちで他にたぐいなき眺めである。
すすきは夏もよし、秋もよいが、冬の霜を帯びた枯れすすきも、十分の画趣と詩趣をそなえている。枯れかかると直ぐに刈り取って風呂の下に投げ込むような徒は倶に語るに足らない。しかも商売人の植木屋とて油断はならない。現に去年の冬の初めにも、池のほとりの枯れすすきを危うく刈り取られようとするのを発見して、わたしがあわてて制止したことがある。彼らもこの愛すべき薄を無名の雑草なみに取扱っているらしい。
市内の狭い庭園は薄を栽えるに適しないので、わたしは箱根や湯河原などから持ち来たって移植したが、いずれも年々に痩せて行くばかりであった。上目黒に移ってから、近所の山や草原や川端をあさって、野生の大きい幾株を引き抜いて来た。誰も知っていることであろうが、薄の根を掘るのはなかなかの骨折り仕事で、書生もわたしもがっかりしたが、それでもどうにか引き摺って来て、池のほとり、垣根の隅、到るところに栽え込むと、ここらはさすがに旧郊外だけに、その生長はめざましく、あるものは七、八尺の高きに達して、それが白馬の尾髪をふり乱したような尾花をなびかせている姿は、わが家の庭に武蔵野の秋を見る心地である。