후리가나로 읽는 일본 고전
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たんていやわ
探偵夜話
岡本 綺堂
岡本 綺堂의 探偵夜話(たんていやわ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 140,363자 · 277화면
「そんなに急いで帰るにも及ぶまい。おれは今日だけでもほかの人達の三倍ぐらいも働いたのだ。」
こんな自分勝手の理屈を考えながら、佐山君は川柳の根方に腰をおろして、鼠色の夕靄がだんだんに浮き出してくる川しもの方をゆっくりと眺めていた。川のむこうには雑木林に深くつつまれた小高い丘が黒く横たわって、その丘には師団の火薬庫のあることを佐山君は知っていた。そうして、その火薬庫付近の木立や草むらの奥には、昼間でも狐や狸がときどきに姿をあらわすということを聞いていた。
煙草好きの佐山君は一本の煙草をすってしまって、さらに第二本目のマッチをすりつけた時に、釣竿を持った一人の男が蘆の葉をさやさやとかき分けて出て来た。ふと見るとそれは向田大尉であった。佐山君はほとんど毎日のように師団司令部に出入りするので、監理部の向田大尉の顔をよく見識っていた。
「今晩は……。」と、佐山君は起立して、うやうやしく敬礼した。
大尉はたしかにこっちをじろりと見返ったらしかったが、そのまま会釈もしないで行ってしまった。佐山君は自分に答礼されなかったという不愉快よりも、さらに一種の不思議を感じた。