후리가나로 읽는 일본 고전
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
吉川 英治의 江戸三国志(えどさんごくし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 577,271자 · 1141화면
また生来十二、三の少女の頃から、お蝶は、人のように夜を気味わるがらない質でもありました。あくまで、お蝶は暗に生きる美しい毒蛾のような生まれ性なのかも知れない。
とにかく、お蝶はそうして、甲府へ行こうとしています。
「甲府へゆけば、小さい時、私に乳を飲ませてくれた乳母やが居る」
そんな、おぼろげな目あてです。しかし、彼女の本心をのぞいて見ると、その乳母をしたって行く目的よりも、江戸を離れよう、江戸から遠くへ身をかくそう――そうしたものに、追われる気持に、追われて歩いているのです。
――やがて、少し道が胸突きになる。
お蝶の歩く星の下はいよいよ暗く、いよいよ嶮しく、岩と熊笹とにせばめられて来ます。――すると、
「オオ――イ、オウ――イ」
遙か下から、木魂に返って呼ぶ声がしてきました。
彼女は、ふと足を止めて、
「……私を呼ぶのかしら?」
騒ぎもせず、そういって後ろの谷をのぞきましたが、その時見ると、薄化粧のお蝶の顔は、いつか、金瞳青眉のおそろしい般若の相に取り変っていました。
お蝶は暫く立ちすくみました。
しかし、耳のせいか、べつな者を呼ぶのであったか、程なくその声もかき消えて、足元の暗に遠い渓流の音を知るのみであります。