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ふしぎなひと

ふしぎな人

江戸川 乱歩

「たのしい二年生」大日本雄弁会講談社/講談社、1958(昭和33)年8月~1959(昭和34)年3月<br>「たのしい三年生」講談社、1959(昭和34)年4月~12月

N4 · 入门 · 新字新假名 · 44,138 字 · 89 页

青空文庫

それを、今夜の十時きっかりに、ぬすみ出してみせるというのです」

「そんなばかな。そんなことができるはずはありません。わたしたちがふたり、書生さんがふたり、うんてん手の栗田くん、それに、木村さんをくわえて六人です。六人が、このへやでがんばって見はっていれば、いくら、かいじん二十めんそうでも、ぬすみ出せるわけがありません」

「わたしも、電話で、そういってやったのです。すると、二十めんそうはせせらわらいました。そして、見はりが多ければ多いほど、おもしろい。いくら見はっていても、かならずぬすみ出してみせるといって、電話を切ってしまいました。まほう使いのようなやつですから、ゆだんできません」

木村さんは、青ざめた顔で、心配そうにいうのでした。

それから、六人の見はりが始まりました。だれも、へやを出るものはありません。六人とも、いすにかけて、じっと金庫を見つめています。

まどは、ぜんぶしめて、かけ金をかけ、二つのドアも、げんじゅうにしめて、中からかぎをかけてしまいました。

「しかし、木村さん。ほうせきは、たしかに金庫の中にはいっているのですか。もう、とっくに、ぬすまれているのではありませんか」