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いちしょうにんとして
一商人として
相馬 愛蔵
――所信と体験――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页
それを思えば中村屋はまことにもったいない幸せである。こうして共存共栄を願望すべき小売店として、一軒があまり大を成すことは考慮すべき問題ではなかろうか。
我々のこの想いはすでに昨年末、ちん餅の価格を定める時にも問題となり、ようやくその一端を現したようなことであった。すなわち中村屋の餅は最上の新兵衛餅ひとすじであって、一般向きに備えているのではないから、御註文下さるのも自ずからきまった範囲のお得意である。これは餅に限ったことでなく、何品でも中村屋の製品はなるべく一つの分野に止め、他店の領分を侵さぬ方針なのである。しかもそれでも歳末のちん餅が比較的安く、そのため近所同業に迷惑を与えるというのでは、考えなくてはなるまい。そこで昨冬は、のし餅一枚につき一般の店より売価をおよそ十銭高くなるようにつけ、その代り目方で気を付けておいたようなことであった。
ちん餅一つにしてもこれだけの心配りを要するのである。ましてこれ以上に店を拡張したり支店を設けなどして、今日以上の客を集めることは考えてはならない。かつて自分は大百貨店の脅威に対して、小売店として同志に呼びかけ、対抗策を極力主張したものである。