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いちしょうにんとして
一商人として
相馬 愛蔵
――所信と体験――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页
商人の妻はお内儀さん
商人の妻はお内儀さん
私は本郷に店を持つとともに、先代中村屋のいっさいを継承しました。店員女中ばかりでなく、主婦をお内儀さんと呼ばせることまで受けつぎました。いったい小売商人の家内を誰も奥さんとはいいません。奥さんは官吏あるいは教職にある人の夫人等、すべて月給生活をしている人の夫人にふさわしい称号ですが、小売店の主婦をお内儀さんというのはこれも最も適当な称び方だと思うのです。それゆえ私は今でもあなた方にお内儀さんといわせ、奥さんとは決して称ばせない。うっかりあなた方が奥さんと私を呼ぶと、私はそっぽを向いて返事をしません。
もし皆さんがお内儀さんというのを奥さんというのより低いと思うならば、それはたいへんな間違いです。夫人あるいは奥さんの仕事の範囲は、いわゆる奥の仕事で、おもに家庭に属する雑多なものです。が、お内儀さんの方は少しく趣きを異にして、家業の仕事の過半を受け持ち、中にはほとんど八、九分まで担当し、残る一、二分が主人の領分となっている家もあるのです。別に権利義務を云々しなくともお内儀さんの命令は行われ、自ずから威厳が保たれる。いうまでもなくこれはそのお内儀さんの徳と手腕によることで、お内儀さんだからいうことをきくというのではありませんが、とにかくお内儀さんは決して軽蔑どころでなく、正に千鈞の重みを