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いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

癲癇病みの喜どん

昔私が母から聞かされたように、あなた方もこの話をよく聞いておいて下さい。お竹如来の由来にはこう書いてあります。

お竹大日如来流し板

慶長年間、江戸伝馬町佐久間某の婢に竹といふ慈悲仏性の女あり。台所の流しもとに布を張り、流るる飯粒を防ぎて己が食となし、己の食を乞食に与ふ。遂に生身の大日如来と化生し、流し板より光明を発したりと。霊像並びに流し板は今東京市麻布飯倉町赤羽心光院にまつる。

末世まで光る後光のさした下女  (江戸時代川柳)

雀子やお竹如来の流しもと    一茶

今でも何ともいえぬ温さをもって思い出されるのは、おはつさんが、私の使い古したものを喜んで受けてくれて、幾年でも大切に保存し、その季節になるとちゃんと取り出して身につけていたということです。そういう親身な情とともに、私は今でも深くおはつさんに感謝しています。

癲癇病みの喜どん

喜どんの喜市はとても芝居好きで相撲狂でありました。彼は本郷から赤坂麹町まで卸の配達に出ましたが、帰りには必ず神田の三崎町を通り、三崎座をのぞくことにきめていました。三崎座といっても今の人には解りませんが、歌扇という女役者が座頭で男の立役を演じ、なかなか人気があっていわゆる民衆的な劇場として、三崎座のファンは相当多かったものです。