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いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

開眼の降誕仏

果物の皮を床に落さず、きまりよく片寄せておく。初めはまごまごして箸を取った少年も、後には『頂きます』といい、箸をおく時は『ごちそうさま』というようになる。いつとなく皆の態度が上がって来ました。あなた方が帰って行った後、女中たちと一緒に一通り食卓をしらべて見て、私はその食卓の整然としているのに嬉しくて有難くて涙がにじんで来るのです。私たちの店員はこんなに行儀のよい子供であることを、いつも心から感謝し、なおこの上にもよかれかしと祈るのです。

開眼の降誕仏

新店員を試験する時、私は必ず『あなたの家では何の宗教を信じているか』と尋ねて見る。三分の二までは仏教という答、もちろん日蓮宗とか真宗とか宗旨はそれぞれ違いますが。

日本の文化は昔、支那、朝鮮を通して仏教がもたらしたものであることは、皆もすでに学んで知っているでしょう。そして支那や朝鮮の文化はまた印度を母胎としています。すなわち釈尊の誕生された国が根元地というわけです。

後代仏教が既成宗教として種々の弊害を生じ、従来の信望を失い、また廃仏毀釈の憂き目に逢って、一時仏教の勢力は全く地を払った時代もあったにかかわらず、何の時代でも文化の上に仏教の恩恵に預らないことはなかったといって差支えないくらい、日本国民の魂には深く何ものかを植えつけられて来ました。