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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
眷属、おたけび鋭くおめき叫んで遮に無に暴威を揮うほどに、神前寺内に立てる樹も富家の庭に養われし樹も、声振り絞って泣き悲しみ、見る見る大地の髪の毛は恐怖に一々竪立なし、柳は倒れ竹は割るる折しも、黒雲空に流れて樫の実よりも大きなる雨ばらりばらりと降り出せば、得たりとますます暴るる夜叉、垣を引き捨て塀を蹴倒し、門をも破し屋根をもめくり軒端の瓦を踏み砕き、ただ一ト揉みに屑屋を飛ばし二タ揉み揉んでは二階を捻じ取り、三たび揉んでは某寺をものの見事に潰し崩し、どうどうどっと鬨をあぐるそのたびごとに心を冷やし胸を騒がす人々の、あれに気づかいこれに案ずる笑止の様を見ては喜び、居所さえもなくされて悲しむものを見ては喜び、いよいよ図に乗り狼藉のあらん限りを逞しゅうすれば、八百八町百万の人みな生ける心地せず顔色さらにあらばこそ。
中にもわけて驚きしは円道為右衛門、せっかくわずかに出来上りし五重塔は揉まれ揉まれて九輪は動ぎ、頂上の宝珠は空に得読めぬ字を書き、岩をも転ばすべき風の突っかけ来たり、楯をも貫くべき雨のぶつかり来るたび撓む姿、木の軋る音、復る姿、また撓む